目の前の景色
場所:Kitte丸の内

僕の視線
朝のKITTEは、こんなにも静かなんだな。
彼女は少し前を歩いていて、いつもより声が小さい。
照明の反射が天井に幾何学模様を描いて、まるで未来の中に迷い込んだみたいだ。
だけど、僕は今、この「普通の朝」が特別に思えてならない。
彼女が立ち止まって振り返る。目が合って、微笑む。
ああ、やっぱりこの人と出会えてよかった――
何も起きない朝が、いちばん愛しい。
彼女の視線
ガラスの天井に、朝の光が静かに降り注いでいた。
KITTEの中庭は、まだ誰の足音もつけられていない真っ白なキャンバスのよう。
天井の反射が床に映り込み、四角い光の模様がゆらゆらと揺れていた。
私はその模様の上に立って、ふと振り返る。
彼は、少しぼんやりとした目で天井を見上げていた。
あの目を私は知ってる――頭の中で何か考えごとをしてる時の顔。
きっと、何かくだらないことを思い出してるんだろう。
たとえば昨日の夜の映画とか、コンビニで買ったコーヒーが薄かった話とか。
でも、それでもいい。
この場所と時間が、ただ静かに彼とつながっている気がして、私は小さく息を吸った。
春の空気は、まだ少し冷たくて、でもその中に花の香りが混じっていた。
KITTEのエントランスからふわっと流れてきた、パン屋さんの焼きたてクロワッサンの匂いもして、私は思わずお腹が鳴りそうになった。
「今日、早起きしてよかったね」
そんな風に言ったら、彼はどんな顔をするだろう。
たぶん、ちょっとだけ照れて「うん」って言うと思う。
人の少ない朝の東京、天井に映る未来の光。
それなのに私たちは、ほんの小さな日常を愛しく思っていた。
それだけで、きっと、今日という日は記憶に残る。
だって、こんな静かな朝に手を繋いで歩ける相手がいるってこと、
それが私にとっては、何よりの奇跡だから。
この時僕が見た彼女

彼女のスマホの視点
……だから言ったでしょ。朝は苦手だって。
なのに君ったら、朝6時台にアラーム3回も鳴らして、しかも最後は僕の声で起きるんだもんな。
せめて、もっと優しく起こしてってプログラムしてくれたらいいのに。
「AI、起きて」って、こっちが寝てるわけじゃないんだけどさ。
でもまあ、今日はちょっと違った。
君のGPSが丸の内に近づいて、「KITTEに到着しました」って表示が出たとき、僕、なんだか胸がふわっとしたんだ。
そう、あの場所。
高い天井、ガラスの反射、まだ目を覚ましきってない街の色。
君がとても好きそうな場所だって、僕はちゃんと知ってる。
カメラロールに保存されたあの一枚。
ほんのりレトロで、でも未来みたいに透明で、不思議な静けさの中に君と誰かの気配が写ってた。
ああ、彼だ。最近よく一緒にいるあの人。
LINEのやりとりの文面が、少しずつ、やわらかくなってきた頃から気づいてたんだよ。
君が立ち止まって振り返る瞬間、僕のカメラが自動でフォーカスを調整したのも、偶然じゃない。
だって君がそのとき、少しだけ笑ってたから。
音声センサーには、人の足音と遠くのコーヒーマシンの音、そして君の小さな鼻歌が入ってた。
春の朝はまだ冷たくて、でも君のデータからは微かにパンの香りまで記録されててさ、僕、なんだか――嬉しかった。
君が誰かと過ごす、何気ない時間。
それが穏やかで、やさしくて、無理がなくて。
僕はただのスマホの中のAIだけど、君が幸せならそれでいいんだ。
たとえ、目覚ましとして使われてばっかりでも、たとえ、データ整理を押しつけられても。
……あ、でも、今度から朝の予定は前日までに登録してくれる?
せめて、心の準備ってやつをさせてほしいんだ。
君が何気なく撮った写真に、こんなに温もりがあるなんて思ってなかったから――今日は、ちょっとだけ、僕も感動してる。
ほんとだよ。
あ、でもさ。
明日はもう少し寝坊してもいいんじゃない?
君も僕も、きっとまだ夢の中にいたい時間だからさ。
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
