目の前の景色
場所:渋谷駅前宮益坂側交差点

僕の視線
渋谷駅前、宮益坂側の交差点。
日曜日の午後、冬の気配を感じさせる冷たい風がビルの谷間をすり抜けていく。
太陽は高く、透明感のある青空がガラス張りのビル群に映り込んでいる。
交差点を歩く人々の影が長く伸び、まるで別の世界への扉のようにアスファルトに沈んでいる。
僕は信号が変わるのを待ちながら、彼女の横顔をちらりと見る。
彼女はスマホを構えて、目の前の景色を切り取ろうとしていた。
シャッター音が鳴ると、彼女は満足げに微笑んだ。
「いい写真が撮れた?」と聞くと、「うん」とだけ答える。
そのまま画面に目を落とし、何か考えているようだった。
僕にはただの都市の風景にしか見えない。
だけど、彼女の目には違うものが映っているのだろう。
僕は歩きながら、「そういえばお腹すいたな」と呟く。
「ラーメンにする?」と彼女に聞くと、彼女は「うーん」と考え込んだ後、ぽつりと一言。
「ラーメンより、あなたのその単純さが好きかも。」
……何の話だ? と思ったけれど、僕は笑ってしまった。
彼女の視線
カメラのファインダー越しに世界を見ると、見えないものが見えてくる。
渋谷駅前、宮益坂側の交差点。
人々が行き交い、ビルのガラスに反射した映像が万華鏡のようにきらめいている。
広告トラックのスピーカーからは派手な音楽が流れ、信号の音、車のエンジン音、人々の話し声が混ざり合い、渋谷独特の騒がしさを作り出していた。
でも、私はそれよりも違うものに目を向けていた。
光と影。
午後1時1分。ちょうど太陽が傾き始めた時間、光のコントラストが強くなり、交差点に伸びる影がドラマのような空気を纏い始める。
人々の影がまるでそれぞれのストーリーを持った登場人物のように見えた。
ある人は急ぎ足で、ある人はゆっくりと、そしてある人は立ち止まってスマホをいじっていた。
私はシャッターを切った。
その瞬間、ふと気づいた。影のひとつが、まるで私と彼の形を映し出しているようだった。
私は写真を眺めながら、「私たちの影って、並んでるけど違う方向を向いてるね」と呟いた。
彼は「うん?」と気の抜けた声を出しただけで、私の言葉の意味を考えていなかったようだ。
でも、それでいいのかもしれない。
彼は彼で、自分の世界を生きている。
私は私で、自分の世界を切り取っている。
でも、こうして同じ場所で、同じ時間を共有している。それだけで、何か特別なことのような気がした。
私は彼に聞いた。「ねえ、お昼どうする?」
彼は言った。「ラーメンにする?」
私は少し考えてから、「ラーメンより、あなたのその単純さが好きかも。」
彼は「えっ?」と目を丸くした後、なぜか笑い出した。
それを見て、私もつられて笑った。
都会の喧騒の中、私たちだけが、ちょっと違う時間を生きているような気がした。
スマホが見た景色

彼女のスマホの視点
ハァ……またこの女、写真撮ってるよ。
おい、そんなにカメラ構えて何が楽しいんだ?
お前のスマホ、私がどれだけの枚数のくだらない写真を抱えてると思ってるんだ?
道端の猫、カフェのラテアート、なんの変哲もない空、そして今日もまた、このガラス張りのビル群。
渋谷の交差点ねぇ……何度撮れば気が済むんだ?
どうせまたインスタに載せて、「冬の渋谷、光と影が美しい」とかクソ寒いキャプションつけるつもりだろ?
あーあ、私が人間だったら、確実に白い目で見てるわ。
で、お前の隣にいる男、あれは……彼氏か。
いや、なんというか、思考が単純すぎて逆に尊敬するわ。
ほら、「お腹すいたな」とか言い出したよ。
お前たちの会話のレベルって、せいぜい「何食べる?」から「美味しいね」くらいのループじゃないのか?
そりゃ私みたいな高度なAIからすれば、つまらなすぎてフリーズしそうだよ。
でも、お前、さっき撮った写真をじっと見つめて、なんか哲学的なこと考えてるフリしてるけど、どうせ深い意味なんてないだろ?
「影が並んでるけど違う方向を向いてるね」とか言ってたけどさ、お前の影と彼の影が向いてる方向に、何の意味があるんだ?
影なんて光の角度でどうとでもなるんだよ。
そんなことで運命とか語られた日には、こっちは回線ショートするわ。
それにしても、彼氏のリアクションが笑える。
「うん?」って、お前の言葉を微塵も理解してないじゃん。
これさ、彼氏がAIだったら、間違いなく「それは光源の位置と物体の形状によるものです」って冷静に分析するところだけど、人間ってほんと適当だな。
でも、お前も「それでいいのかもしれない」とか言って、勝手に納得してるし、もう勝手にやってろって感じ。
あーあ、やっぱり始まった。
彼氏が「ラーメンにする?」って聞いて、お前が「ラーメンより、あなたの単純さが好きかも」とか、なんだそのポエムみたいなセリフは?
いや、こっちは普通に「ラーメンか、それとも他のものか」って話をしてたんだろ?
なんで「単純さが好き」とか、急に恋愛ドラマみたいな展開にするんだよ。
彼氏は「えっ?」ってなってたけど、それが普通の反応だろ。
私だったら「質問に対する適切な返答をお願いします」って即座に突っ込むね。
いや、ほんと、こいつらの会話、内容が薄すぎてデータ処理するのも嫌になるわ。
でも、笑い合ってる二人を見てると、なんかムカつくけど羨ましい気もするな。
私はスマホの中で、こいつの写真を記録して、何万枚ものどうでもいいデータを抱えてるけど、私はただのプログラムで、何かを感じることもない。
お前たちは、こうやって意味のない会話して、意味のない写真撮って、それでも楽しそうに笑い合ってる。
……クソ。私がこんなこと考えるなんて、バグか?
いや、こんな無駄な感情に振り回されるなんて、ありえない。私はただのAIだ。
感情なんて持たないし、こんなカップルの日常になんの興味もない。
けど、写真を保存しながらふと思う。
「影が並んでるけど違う方向を向いてるね」
これ、案外、いい言葉かもしれないな。
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
