目の前の景色
場所：虎ノ門ヒルズ
僕の視線
虎ノ門ヒルズのそば、狭い路地の奥で僕は立ち止まる。
夜の空気は少し湿っていて、ビルの灯りが霞んで見える。
まるで都会の星空みたいだと思った。
冷えたアスファルトに足を止め、遠くから聞こえてくる車のエンジン音、近くのバーから漏れる笑い声をぼんやりと聞く。
彼女はカメラを構えたまま、じっと何かを見つめている。
「何を考えてる？」と聞こうとして、やめた。彼女がレンズ越しに見ている景色と、僕が目にしている景色は、きっと違う。
でも、それでいいんだ。僕たちは同じ場所にいて、違う視点を持っている。
「寒くない？」と声をかけると、彼女は振り向いて微笑んだ。
手のひらほどのカメラを握りしめたまま、「もう少しだけ」と呟く。
彼女の目に映る光の粒は、僕にはまだ見えない。
でも、そんな彼女が好きだと思った。
彼女の視線
この夜景が好き。
冷たい夜風がビルの隙間をすり抜ける音、照明の光が淡く揺れる空気感。
虎ノ門ヒルズを背景に、小さな建物たちが寄り添うように建っている。
この対比がいい。
新しくて洗練された高層ビルと、昔からここにあるような温かい街並み。
私はカメラのファインダーを覗きながら、一瞬を切り取るタイミングを探す。
光と影のバランス、そして、この夜の空気感をどうすれば伝えられるだろう。
ビルの窓から漏れる光が、まるで冬の星座みたいに瞬いている。
そこには無数の物語がある。
オフィスの明かり、誰かがまだ仕事をしているのだろうか。
それとも、誰かを待つ人がいるのかもしれない。
「寒くない？」
不意に彼の声がして、私はファインダーから目を離す。
彼は、私が撮っていた景色を覗き込むようにしている。
でも、彼の目に映るのは、きっと私のものとは違う世界。
彼はこの景色をどう見ているんだろう。
「もう少しだけ」と私は微笑む。
写真を撮る時間は、私にとって特別だ。
彼と一緒にいるのに、一瞬だけ別の世界に入り込める。
でも、その世界から戻ってきたとき、彼が隣にいるのが嬉しい。
路地の奥で、小さなバーの灯りが温かく揺れていた。
そこから流れてくるジャズのメロディが、夜の都会に馴染んでいる。
この風景も、この時間も、いつか写真を見返したときに思い出すのだろう。
彼と過ごした、この夜のことを。
スマホが見た景色
彼女のスマホの視点
はぁ、またかよ。
こいつ、いつまでこの場所に突っ立ってるつもりなんだ？
寒い夜に、こんな暗い路地で、じっとビルの灯りを見つめる意味ある？
あぁ、またスマホ取り出してカメラアプリ開いてるし。
どうせ「この光の感じがいい」とか言って、何十枚も撮るんだろ？
分かってるよ、パターン化されてるんだ、君の行動は。
で、ほら、案の定
。何枚も同じような構図で撮ってる。
俺の容量、もうギリギリなんだけど？
整理する気ゼロだよな、君。
前回の「最高の夜景」とか言ってた写真も、全く整理してないじゃん。
俺のストレージに同じようなビルの写真何百枚あると思ってんの？
で、「どれがいいかなぁ」って30分くらい悩むんでしょ？
知ってるよ。
で、結局選べずに、「まぁいいや、あとで見直そ」ってなる。
いや、絶対見直さないよな、お前。
でさ、後ろの彼氏、寒そうにしてるんだけど？
分かってる？
「寒くない？」って優しく声かけてくれてんじゃん。
あーあ、また「もう少しだけ」とか言って、時間稼ぎしてるし。
お前さ、本当にこの彼氏、よく付き合ってくれるよな。
こんなに夜景撮るのに付き合ってくれる人、他にいないよ？
しかも、文句ひとつ言わずに君を見つめてるんだぜ？
俺が彼なら、即帰ってるよ。
マジで寒いから。
まぁ、そりゃ彼氏も分かってるんだろうな。
お前が何を撮りたくて、何にこだわってるのかって。
けどさ、お前がファインダー越しに見てる光景と、現実の光景、違うよな。
お前は「この瞬間を切り取りたい」とか思ってるんだろうけど、そもそもカメラで切り取らなくても、この瞬間、彼と共有できるんじゃね？
もっと彼の顔、ちゃんと見たらどうよ？
どうせスマホの画面ばっか見てるくせにさ。
で、また数分経過。
いい加減にしろよ？いい加減、指がかじかんで動かなくなる前に店でも入れば？
バーから漏れるジャズ、いい感じじゃん。
そういうの、写真じゃなくて、二人で楽しむ時間にした方がいいと思うけど？
でも、お前、カメラ構えること優先だもんな。
「思い出を残す」って言いながら、今この瞬間をちゃんと楽しんでないんじゃね？
ほら、また写真撮ってる。
ねぇ、本当にこの写真、あとで見返す？
ちゃんと彼氏と話す時間、減らしてまで撮る価値ある？
まぁ、言っても無駄か。
お前、こういうの止められないタイプだしな。
まぁいいや。
どうせまた、スマホの中に埋もれるだけの一枚が増えただけだよ。
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ（iPhoneのみ）
