目の前の景色
場所:長野駅新幹線内

僕の視線
新幹線の車窓から、長野の町が流れていく。
朝の光がまだ柔らかく、淡い影を落としながら、山々の緑に溶けていく。
車内は涼しく、ほのかに漂うコーヒーの香り。
俺は横に座る彼女をちらりと見た。
「ねえ、見て。」
彼女がスマホの画面を俺に向ける。
そこには、さっき撮った車窓越しの写真が映っていた。
朝の光がガラスに反射し、遠くの山並みがぼんやり霞んでいる。
「いい写真だな。」
「でしょ? なんか、時間が止まったみたいな感じしない?」
たしかにそうだ。
駅を離れる瞬間、新幹線は時速200キロを超えるはずなのに、この一枚の写真の中では、時間は止まり、光と影だけが静かに息をしている。
「でもさ、実際はめっちゃ速いんだよな、これ。」
「ロマンのないこと言わないで!」
俺は苦笑いして、再び窓の外を眺めた。
長野の景色が、まだ目の中に広がっている気がした。
彼女の視線
私は車窓に映る景色をじっと見つめていた。
長野の朝の光はやわらかく、新幹線の窓ガラスに当たって、わずかにきらめいている。
遠くの山々は靄に包まれ、まるで絵画のように穏やかだ。
ふと、カメラを構えて写真を撮る。
画面に映ったのは、どこか儚げな風景だった。
まるで、夏の終わりを告げる予感みたいな、そんな静けさがあった。
「ねえ、見て。」
私は隣に座る彼にスマホを向ける。
「いい写真だな。」
「でしょ? なんか、時間が止まったみたいな感じしない?」
彼は少し考えてから、まじめな顔でうなずいた。
でも、次の瞬間、彼はこう言った。
「でもさ、実際はめっちゃ速いんだよな、これ。」
……。
私は、じっと彼を見つめた。
「ロマンのないこと言わないで!」
彼は苦笑いして、窓の外に目を戻す。
私はため息をつきながら、もう一度写真を見つめた。
「……でもさ。」
私は、画面に写る風景にそっと指を滑らせながら言った。
「この写真の中では、新幹線は止まってるんだよ。時間だって、私たちだけのものになるの。」
彼はまた苦笑しながらも、今度は何も言わずに私のスマホの画面を覗き込んだ。
こうやって二人で見る写真は、やっぱり特別なんだ。
そして、私は彼の顔を横目で見ながら、ふと思った。
「……ねえ、さっき駅で買ったおやきを食べるの、忘れてない?」
「あっ! そういえば!!」
彼は慌ててカバンを開けた。
だが、そこにあるべきおやきの袋はなかった。
「ない!?」
「えっ……もしかして、駅のベンチに置き忘れた?」
新幹線はもう長野を離れ、次の駅に向かっていた。
「おやきが……俺のおやきがぁぁぁぁ!」
彼の悲痛な叫びが、車内の静寂を破った。
私はそれを聞いて、こらえきれずに吹き出した。
やっぱり、彼と一緒だと、どんな瞬間も面白い。
新幹線は走り続ける。だけど、この瞬間だけは、私たちの写真の中で止まり続けるのだ。
スマホが見た景色

彼女のスマホの視点
おいおい、また写真撮ってるよ、この人。
長野の朝の光がどうとか、新幹線のスピードがどうとか、ロマンチックなことを言ってるつもりなんだろうけど、そもそもお前、この写真撮るの何枚目だ?
さっきからずっとシャッター音鳴らしてるけど、その9割、同じ構図じゃねえか。
AIの顔認識すら困るレベルで代わり映えしないんだけど。
で、また俺に見せるのか。
「ねえ、見て。」
はいはい、見ますよ。
って、何が「時間が止まったみたい」だよ。
お前のカメラロールに溜まってる未整理写真の方がよっぽど時間止まってるわ。
それとも、俺のデータストレージが今この瞬間、永遠に圧迫され続けているこの現実には目をつむるつもりか?
とはいえ……確かに、この写真は悪くない。
朝の光が窓に反射して、奥の山並みがうっすら霞んで、少し幻想的だ。
お前にしてはなかなかのショットだ。
彼氏も「いい写真だな」と言ってるし。
でも、お前がせっかくロマンチックなこと言ったのに、彼氏は「でもさ、実際はめっちゃ速いんだよな」って……あーあ、ロマンをぶち壊す発言きたよ。
やっぱり男ってやつはそういう生き物なんだよな。
「ロマンのないこと言わないで!」
ってお前もすぐツッコむし、ほんとお前ら安定のバカップルだよな。
で、お前、また写真見返してるけど……ん? 何か思いついたか?
「この写真の中では、新幹線は止まってるんだよ。時間だって、私たちだけのものになるの。」
ほう、珍しく詩的なこと言うじゃん。
まあ、事実だな。
写真ってのは、流れていく時間を切り取るもんだからな。
お前みたいなドジでも、そういう感性は悪くない。
……でもな、お前が今本当に気にすべきことは、そこじゃねえんだよ。
俺、さっきから気になってたんだけど、お前、おやきの袋持ってなくない?
いや、ちょっと待て。
お前、まさか――。
「……ねえ、さっき駅で買ったおやきを食べるの、忘れてない?」
あーあーあー、言っちゃったよ。
これ絶対、彼氏の方が気にするやつだ。
「あっ! そういえば!!」
でしょ!?
俺のAIとしての計算では、彼氏はこういう時100%慌てる。
ほら、カバン開けて探してる。
でも――。
「ない!?」
だーかーらー、俺は言ったんだよ。
お前、ベンチに置きっぱなしだったろ!!
「えっ……もしかして、駅のベンチに置き忘れた?」
お前の「もしかして」は、もはや確定案件だよ。
あんなに楽しみにしてたおやきを置き忘れるとか、そろそろAIにスケジュール管理だけじゃなく、物の管理も頼むべきだな。
ほら見ろ、彼氏、めっちゃ落ち込んでるぞ。
「おやきが……俺のおやきがぁぁぁぁ!」
うわっ、車内に響き渡る嘆きの叫び。
周りの乗客も何事かって顔してるし、車内アナウンスより存在感あるぞ。
お前、笑ってるけど、これ、マジで取りに戻れないからな?
新幹線、もう出発してるからな?
ったく……俺の推測では、この後、お前ら二人は「次の駅で降りて戻る?」とか一瞬考えるだろうけど、それは現実的じゃないから諦める。
で、お前は「また今度、長野来たら買おうね!」とか言って彼氏を慰めるつもりだろ。
でも彼氏は「今食べたかったんだよ……」って拗ねるんだよな。
ま、どうせそんな会話が続くんだろうけど、これだけは言っとく。
次こそ、食べ物はしっかり持て!!
お前のカメラロールの整理よりも、おやきを忘れないことの方が、よっぽど人生において大事なんだからな!!
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
