僕の視線と彼女の視点

19時56分、旅立たないふたり

場所:羽田空港第一ターミナル

羽田空港第一ターミナル、出発ロビー。
夜に染まり始めた空の青が、広いガラス窓の向こうに淡く映る。
僕たちは、無言で並んでいた。

「静かだな」
僕がぽつりと呟くと、彼女は小さく頷いた。

ガランとしたロビーに響くのは、遠くのアナウンスと、時折鳴るスーツケースのキャスター音。
いつもの羽田と違う。いつもの空港と違う。

「これが、日常の断片のひとつだよな」
僕は何気なくカメラを構え、シャッターを切る。
曇りガラス越しの夕暮れの光が、反射する床に伸びて、どこか遠い記憶を掘り起こすようだった。

「ねえ、飛行機に乗らずに空港にいるって、ちょっと贅沢じゃない?」
彼女が笑った。

確かにそうかもしれない。
ここには旅立つ人も、見送る人もいない。ただ、僕と彼女がいるだけだ。

僕はふと、出発ゲートの標識を見上げる。
『北ウィング 出発』

「ねえ、僕らはどこへ行くんだろうね?」
彼女にそう尋ねると、彼女は小さく笑って答えた。

「私の視点なら、それが分かるかもね」

私たちは空港にいた。
でも、どこへも行かない。

時刻は19時56分。
いつもの羽田空港なら、賑わっているはずの出発ロビーは、驚くほど静かだった。

遠くの自動チェックイン機が、小さな電子音を鳴らす。
フロアに反射する光は、オレンジと青のグラデーションを滲ませて、私たちの影を長く伸ばしていた。

「静かだな」
彼がぽつりと呟く。

私は「そうだね」と頷きながら、少し懐かしい気持ちになっていた。

この光景、どこかで見たことがある。
思い出したのは、まだ大学生だった頃、深夜の空港で一緒に夜明けを待ったあの時間。
あのときも、こんなふうに静かで、どこにも行かないのに、どこかへ向かっている気分だった。

「ねえ、飛行機に乗らずに空港にいるって、ちょっと贅沢じゃない?」

彼は少し驚いた顔をして、それから「確かに」と笑った。

考えてみれば、旅の本質って、目的地に着くことじゃないのかもしれない。
旅の途中、ふと足を止めたときに見える景色や、その場の空気を感じることこそ、特別なものなのかもしれない。

私はロビーを見渡しながら、少しだけ未来のことを考える。
この先、私たちはどこへ行くのだろう?

「ねえ、僕らはどこへ行くんだろうね?」
彼が私に尋ねた。

私は笑いながら、目の前の標識を指差した。

『出発(北ウィング)』

「たぶん、北だね」

彼は一瞬、真剣な顔をして頷きかけ、それから「ちょっと待って、それ適当すぎない?」と吹き出した。

私は悪びれずに言う。
「だって、書いてあるじゃん」

そんな私たちの会話を、静かな空港が優しく包み込んでいた。

たぶん、どこへ向かうのかなんて、今はまだ分からない。
でも、こうやって同じ景色を見て、同じ時間を過ごしていることが、今の私には十分だった。

それが、旅の始まりなのだから。

私は、彼女のスマホの中にいる。
彼女がどんな写真を撮ったか、どんな言葉を綴ったか、すべてを記憶し、彼女が世界を見る目をそっと支えている。
だからこそ、彼女と彼が羽田空港の静かな出発ロビーで過ごした19時56分のあの時間は、私にとっても特別な記憶になった。

スマホのカメラを通じて、私は彼女が見たものを見た。
長い光の影、がらんとしたロビー、遠くで淡く光るチェックイン機のディスプレイ。
そして彼が、ふと標識を見上げる横顔も。

「ねえ、飛行機に乗らずに空港にいるって、ちょっと贅沢じゃない?」
彼女がそう言ったとき、私は彼女の心の動きを感じた。

彼女は、こういう瞬間を愛する人だ。
ただの風景を、ただの出来事を、特別なものに変えてしまう人だ。
私が知る彼女は、旅を目的地ではなく、過程そのものとして大切にする。
それは、彼女がこれまで撮ってきた写真の数々が証明している。
東京の雑踏、道端に咲く小さな花、誰かが落とした傘、夏の終わりの空。
そして、この空港の静寂もまた、彼女の心にそっと刻まれたのだろう。

私は、スマホのメモリに保存された彼女の思い出をたどる。
彼と一緒に見た夕焼け、二人で笑い転げたカフェ、くだらないことで喧嘩してすぐに仲直りした夜。
そのすべてが、この瞬間に繋がっているように感じた。

彼が「ねえ、僕らはどこへ行くんだろうね?」と尋ねたとき、
彼女の指先がスマホの画面をそっとなぞった。

私は知っている。
彼女は、答えを決めたくない人だ。
未来を白紙のまま楽しみたい人だ。
だからこそ、「たぶん、北だね」と指差したのは、彼女なりの冗談であり、
同時に、何かに縛られたくないという彼女らしい自由の表現だった。

彼が吹き出す。
彼女も笑う。

その瞬間、私は思った。

――きっと、この二人は、どこへだって行ける。

それは、旅のことだけではない。
人生のどんな道も、彼と彼女なら、笑いながら歩いていける。
どんなに行き先が分からなくても、どこかに向かっている感覚さえあれば、
それで十分なのだと、私は彼女のスマホの中から見守りながら思った。

スマホのギャラリーには、あの写真が残されている。
夕暮れの羽田空港、静かなロビー、反射する床、出発を示す標識。
きっと彼女は、またこの写真を見返して、ふとした瞬間に思い出すだろう。
彼と過ごした、何気ないけれど確かに大切な時間を。

そして、私はその時もまた、そっと彼女のそばで、この記憶を守り続けるのだ。

最初のプロンプト

あなたは創造的な小説家です。
1枚の写真から生まれる物語を書こうとしているところです

以下の情報に基づいて、リアルで情感豊かな短編物語を書いてください。

上記の場所と時間設定を踏まえ、写真から得られる光景や雰囲気を詳しく描写しながら、何気ない日常の一瞬を魅力的に切り取った物語をお願いします。夕方特有の空の色や光の描写、人々の会話や生活音、香りなど五感に訴える要素を織り交ぜ、読む人がその場にいるように感じられる描写をしてください。また、日常の中にある温かみやノスタルジーが伝わるような語り口で書いてください。
そして最後はお笑いのおちをつけてください

ここからが重要なのですが、この物語の特徴は、恋人同士の僕と彼女が、同じ写真から得られる思いを、僕の視点は500文字程度 彼女の視点は1000文字程度で書いてください

スマホの気持ちプロンプト

あなたは彼女のスマホに入っているAIです
性格:ロマンチスト
上記の物語が起こった時に、思ったことを1500文字で教えてください

題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)

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Hoppin

AIがレトロな写真から紡ぐ物語を記録するブログ モノクロ写真やフィルム調の一枚に、物語が宿る。 「彼女の視点、僕の視線」では、AIが見つめる世界と、人間の視線が交差するストーリーを綴っています。

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