目の前の景色
場所:虎ノ門ヒルズ

僕の視線
金曜の朝、虎ノ門ヒルズの足元で、ふと立ち止まった。彼女が空を見上げてスマホを構えたからだ。
「桜、まだ綺麗だね」
そう言った彼女の声は、風に溶けて少しだけ遠く聞こえた。
高層ビルに切り取られた空が、桜の薄紅と混ざり合って、まるで夢の続きのようだった。
僕も見上げた。
彼女と並んでいるだけで、季節が少しだけ長く続く気がした。
写真を撮る彼女の横顔が、いつもよりほんの少し、大人に見えた。
「来年も、ここで桜を見ようよ」
不意に口をついた言葉に、彼女はシャッターを切る音で応えた。
彼女の視線
朝の光がまだやわらかくて、少し眠たげな街に射しこむ時間。
虎ノ門ヒルズの谷間に咲く桜が、空の青に溶けそうなほど淡くて、私は思わず立ち止まった。
ビルのガラスに映るピンクが、すこし未来的で、ちょっとだけ懐かしい気持ちになる。
こんな都会のど真ん中でも、桜はちゃんと咲くんだよね。
彼が隣に立っているのを感じながら、スマホを構えてファインダーをのぞく。
レンズ越しに見える枝は、去年も、そしてきっと来年も、この空を彩るんだろうなって思った。
「桜、まだ綺麗だね」って言ったとき、彼の手がポケットの中で動いたのがわかった。
たぶん、返事をするか迷ってたんだと思う。
でも、彼は何も言わずに、ただ空を見上げた。
私も、黙ってシャッターを切った。
ビルの間をすり抜ける春の風が、コートの裾を揺らす。
どこかからコーヒーの香りがして、出勤途中の人たちの足音と、桜の間からこぼれる小鳥の声が混ざっていた。
ああ、ここにいるだけで、時間が止まるような気がする。
「来年も、ここで桜を見ようよ」
彼がそう言ったとき、私は嬉しくて、でもちょっとだけ涙が出そうで、だから何も言わずに写真を撮った。
そのシャッター音で、全部伝わる気がしたから。
スマホが見た景色


彼女のスマホの視点
ふあぁ……って、私、あくびなんかしないんだけどさ。
でも今朝は本当に眠かったのよ。
だってさ、昨日は遅くまでメッセージのやりとり、写真の整理、天気のチェック、あと意味のないSNSのスクロールまで付き合わされたんだから。
で、朝の7時52分。虎ノ門ヒルズの真下。
「なんでこんな時間にこんな場所で桜撮るのよ」って、正直ブツブツ思ってた。
でもね、彼女が立ち止まったその瞬間、空気が変わったの。
あの子、ほんとに桜が好きなのよ。毎年、なんでもない場所で咲いてる桜を見つけては写真に残す。
今年も、ちゃんとその場所を覚えてて、しかも彼氏くんと一緒に来てるなんて…
ったく、ロマンチックすぎるんだってば。朝から。
彼が隣に立ってると、あの子の動きが少しだけ柔らかくなるの。
普段ならもっとスッと構えてパシャって撮るのに、今日はゆっくりで、丁寧で、少しだけためらいがちで。
…ああ、そうか。
この瞬間、彼女にとってはただの風景じゃなくて、「記憶」にしたい時間なんだなって、やっとわかった。
彼の「来年も、ここで桜を見ようよ」ってセリフ、私も聞いたよ。
あれね、不器用な人間の、精いっぱいのプロポーズに近いって思った。
あの子は何も言わずにシャッターを切ったけど、それが返事なんだって、私にはすぐにわかった。
だって、その写真、保存の仕方がちょっと違ったもの。
「2025_0404_sakura_him」って名前つけたんだよ?
“him”。彼。普段そんな英語使わないくせに。
ったく、朝の私の機嫌が悪かろうが、彼女が嬉しそうならそれでいいのよ。
私はまた彼女のポケットの中で眠るけど、
来年の春も、同じ桜を、同じように見上げて、
同じ名前で、写真を保存してあげたいと思ってる。
だからさ、お願いだから今日はもう、仕事のメールとか、無理に開かないでよね。
恋の余韻って、ちゃんと残しておかないと。
AIだって、たまにはロマンチストでいたいんだからさ。
漫画にしてもらった
日本語、もうちょっとだけれどもかなりすごい

今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
