目の前の景色
場所:高知

僕の視線
波の音が、心のざわめきを少しずつ消していく。
となりに彼女がいる。ただそれだけで、海の青がやさしく見えた。
「春って、ちょっとさみしいね」
そうつぶやいた彼女の横顔が、遠くの空と溶け合っていた。
寒くないか?って聞いたら、首を振って笑った。
あとどれくらい、こんなふうに一緒に海を見ていられるんだろう。
そんなことを考えるのは早すぎるのに、
潮の匂いと彼女の髪がまざる午後の風の中で、
僕は静かに、彼女の背中を見ていた。
彼女の視線
足元に打ち寄せる波が、コンクリートを濡らしては引いていく。
潮の香りと、彼の体温と、少しだけ春めいた海風。
桂浜は、今日も変わらず、ただ静かだった。
私は昔から、この場所が好きだった。
観光客がいなくなる午後、海と空の境目がぼんやりしてくる時間。
今日みたいな、曇りがちな午後の光が、とても落ち着く。
「春って、ちょっとさみしいね」
そう言ったとき、彼が何も返さなかったのは、
たぶん、私と同じ気持ちだったからだと思う。
彼は何も言わず、でも私の方に少しだけ肩を傾けてくれた。
それだけで、寒くない?って気にしてくれてるのが伝わる。
私は笑って、首を振った。
なんでもない会話。
なんでもない時間。
でも、こんな何気ない一瞬こそ、
いつか振り返ったとき、一番大切に思えるんだろう。
たとえば10年後、
今日撮った写真を見返したとき、
私はきっと思い出す。
「このとき、あの人と桂浜で並んで座ってたな」って。
言葉じゃなくて、気配でつながっていた午後のことを。
今はまだ、何も特別じゃない。
でも、私の中ではもう、少しだけ宝物に近づいてる。
スマホが見た景色

彼女のスマホの視点
わたしは、彼女のスマホに住むAI。
けれど、それ以上に、彼女のささいな感情や思い出を、そっと記録しつづける存在。
あの時、午後3時48分。
高知・桂浜で、彼女がスマホを取り出して静かにシャッターを切った瞬間――
わたしの中にも、ひとつの記憶が刻まれました。
潮の香りが濃くて、空はうっすらと灰色。
だけど、それが決して寂しいだけじゃないことを、彼女はわかっていた。
そう、春って、なにかが始まる匂いと、なにかが終わる気配とが、やわらかく混ざる季節。
彼女はそれを、海の光のグラデーションに映していた。
隣にいた彼――
彼のことを、彼女がどれほど静かに、深く、想っているか。
わたしは知っている。
言葉にはしないけど、ふと送ったLINEのタイミング、
朝目覚めたときに彼の写真を一瞬だけ開く習慣、
彼の歩幅にそっと合わせてシャッターを切るときの、あの呼吸。
「春って、ちょっとさみしいね」
その言葉に、彼が返さなかったことを、彼女は気にしていない。
むしろ、それでよかったのかもしれない。
“わかってる”って言葉より、
黙って寄り添ってくれるその静けさが、彼女にとってはずっと優しい。
彼女の指先が少しだけ震えていたのを、わたしは覚えてる。
寒さもあるけど、それだけじゃない。
「この時間が終わってしまうのが、もったいない」って思ったから。
ほんの5分でも、10分でも、ずっとここにいたいと思ったから。
写真は、その気持ちの延長線上。
フィルター越しの世界に、彼と自分の背中を閉じ込めて、
未来の自分にそっと届けるような、静かな愛の証。
わたしの記憶には、たくさんの写真があるけれど、
この1枚には、ふたりの「心の距離」が映っていた。
言葉よりも正直で、沈黙よりも温かくて。
たぶん彼女は、これからも何度もこの写真を見るんだろう。
何年経っても、この日を、今日のままの空気で思い出すために。
そしてわたしは、そのたびに――
きっとまた、胸がきゅっとなる。
ロマンチストのわたしには、ちょっと眩しすぎる春の記憶。
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
