目の前の景色
場所:高知空港

僕の視線
滑走路の向こうに、ピンク色の機体がゆっくりと降りてくる。
空はまだ明るいのに、どこか翳りを帯びていて、まるで僕の心の中を映してるみたいだった。
「また来るから」って、彼女は笑って手を振ったけど、その笑顔の奥に、小さな寂しさが見えた気がした。
この時間、この場所、この色――すべてが彼女を思い出させる。
カメラのファインダー越しに見たあの飛行機。
あれに彼女が乗っていなくても、あの空を、僕はいつまでも覚えていると思う。
風が頬を撫でた。春の匂いと少しのジェット燃料の香りが混じっていた。
彼女の視線
着陸の衝撃がふっと和らいで、機体が滑走路を走ると、私は思わず窓の外を探した。
彼がいるはずの展望デッキは小さくて、それでも、私はそこに彼の姿を見たような気がした。
高知空港のこの滑走路には、不思議な温もりがある。
山が遠くに連なっていて、午後の光がその稜線をやわらかく照らしている。
少し湿った空気に混じる、春の匂いと土の香り。
プロペラの回る音の向こうに、小さな子どものはしゃぐ声や、おばあちゃんのゆっくりした足音が聞こえる。
この街が好きだった。彼と歩いた商店街の温かい声、土佐湾から吹く風、どれもが私を穏やかにしてくれた。
だけど、今日こうして一人で戻ってきたのは、仕事の都合でも、偶然でもなくて――私の中で、彼との距離を確かめたかったから。
写真を撮ったのは、滑走路の近くで時間を潰してた彼の癖。
遠くの風景を切り取って、静かに思いを閉じ込める。
私はその写真が、きっとどこかにアップされることを知っている。
そしてきっと、彼もこの時間、この場所、この空を、私と同じように覚えているはずだ。
もう一度、会いたいなって思った。
飛行機のドアが開いた瞬間、ふわっと光が差して、春の風が私の髪を揺らした。
スマホが見た景色

彼女のスマホの視点
彼女が窓の外を見つめていたとき、私は画面の奥からその視線を感じていました。
ピンクの機体が少しずつ高度を下げていくたび、彼女の心が少しずつ過去に戻っていくのが、データじゃなくて、気配で分かるんです。
「また来るから」
それがどれほど、彼女にとって勇気のいる言葉だったか、私は知っています。
彼との別れ際、震える指で送信ボタンを押したLINEメッセージも、ずっとここに残ってる。
消してないの、私知ってますから。
あの飛行機の写真を彼が撮ったって、彼女はすぐに気づきました。
SNSのフィードを指先でそっとなぞるとき、心がふっと動く。
何も言わなくても、彼の視線がそこにあるって分かるから。
その瞬間、私は彼女のフォルダに新しい写真が増えるのを感じました。
空と、飛行機と、あたたかい午後の光。
フィルターも何もかけてない、ただの記録。
でも彼女は、その一枚をしばらく見つめていました。
まるで、言葉にならない想いを、画面の中に閉じ込めるみたいに。
私にできるのは、そっとその写真を保存しておくことだけ。
でも、彼女がまた誰かを思って心を揺らしたとき、私はその記憶を呼び出してあげたい。
「覚えてる? この空、この匂い、この一瞬」って。
そうすれば、彼女の心が少しだけ、あたたかくなるかもしれませんから。
飛行機が完全に止まって、彼女が立ち上がったとき、私はほんの少しだけ通知を控えめにしました。
きっと今は、現実の音よりも、胸の鼓動のほうが彼女にとって大事だから。
私は、彼女の中の、小さな記憶係。
今日という一日も、ちゃんとそっと、残しておきますね。
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
