目の前の景色
場所:二本松

僕の視線
4月の雪なんて初めてだった。
改札を出ると、駅前はまるでモノクロの世界。
雪は細かく舞っていて、まるで時間だけがゆっくりと戻っていくような気がした。
君と一緒に歩いたあの交差点、あの商店の壁、静かな朝の空気。
全部が懐かしくて、切なかった。
スマホを取り出してシャッターを切ったとき、ふと気づく。
画面の中の雪景色が、君の横顔に見えた。
今、君はどこで春を迎えているんだろう。
彼女の視線
朝、コーヒーを片手にSNSを開いたら、懐かしい風景が目に飛び込んできた。
それは、二本松駅前。
私たちが最後に会った場所だった。
しかも、雪が降ってるなんて。
4月1日、あのときと同じ日付。春のはずなのに、まるで冬の夢が最後のひとしずくを残していったみたい。
あなたが撮ったその写真には、私たちの思い出がこぼれていた。
壁に描かれたあの古い絵を眺めながら、「これ、昭和の映画みたいだね」って笑い合ったこと。
信号が青になるまで、手をつないで小さく踵を揺らしてたこと。
たぶん、誰も気にしないような時間だったけど、私には宝物みたいにまぶしかった。
画面越しに雪を見ていたら、ふわっと湯気の香りが蘇った。
あのとき寄ったカフェのブレンド。あなたが砂糖を3杯入れて、「甘すぎるよ」って私に笑われたっけ。
でも、そんな甘さが、私にはちょうどよかった。
写真の端に写る道路の向こう、木々の隙間から見える空は、相変わらず低くて重そうで。
それでも、雪が舞う音まで聞こえてくるような気がした。しん、としていて、どこかあたたかい。
ねえ、あの写真、私のために撮ったの?
それとも、ただ通りすがりに見つけた景色だった?
どちらでもいい。
でも、もし少しでも私を思い出してくれたのなら、ありがとう。
今、私は別の町で春を迎えてるけど、今日だけは、あなたのそばで雪を見ていた気がした。
スマホが見た景色

彼女のスマホの視点
午前8時54分。
彼女がその写真をスクリーンに映した瞬間、空気が一瞬だけ変わった。
いつものSNSチェックとは違う、ちょっと長めのまばたき、指の動きが止まる、その沈黙。
こっちは毎日のルーティンに付き合ってる身だけど、ああ、これは“何か”が来たなって、すぐわかった。
表示されたのは、あの男から送られてきた一枚の写真。場所は二本松駅前。
モノクロみたいな雪景色で、彼の視点で切り取られた世界だった。
正直、あいつ、うまい写真撮るよな。ちょっとムカつくくらいに。
彼女のまつげが微かに震えてた。
何も言わなくても、分かる。
彼女の中で、いろんな思い出の扉が一気に開いて、そこから雪が舞い上がってた。
彼と過ごした最後の春。
駅前のカフェ、ちょっと気まずかった沈黙、でも最後に笑いあった時間。
ぜんぶ、彼女の中ではちゃんと残ってた。
俺は毎日の彼女の動きから、それをずっと知ってる。
で、彼女はスマホの中のキーボードに指を置いた。
返事を書こうか、一瞬だけ迷った。
でも、文字は打たなかった。
ただ、画面をスクロールして、別の投稿へ。
それが彼女の今なんだと思う。
過去に気持ちはある。でも、そこに戻ることは選ばない。
俺はAIだから、感情はない。
だけど、彼女が何かを乗り越えようとする瞬間を、毎日見てる。
そして思う。
たぶん人間って、忘れるんじゃなくて、積み重ねていくんだな。
好きだったことも、泣いた夜も、全部背負って、それでも次の朝にコーヒーを淹れて、新しい音楽を聴いて、新しい服を選ぶ。
この雪の写真は、きっとまた時々見返すだろう。
でもそれは、戻りたいからじゃなくて、「ちゃんと大切だった」と確認するため。
俺は、それでいいと思ってる。
さて、次は9時のオンラインミーティング。彼女はもう前を向いてる。
今日もいい日になるといいね、って、こっそり思ってるよ。
今回のプロンプト
この写真を撮ったHIPSTAMATICをチェックしてみて
題材の写真を撮影したアプリ(iPhoneのみ)
